網膜剥離の原因は加齢だけじゃない?症状や治療法も解説
2025年11月4日

網膜剥離と聞くと、加齢による目の病気をイメージする方も少なくありません。
しかし、若年層でも発症するケースがあり、網膜剥離の原因は加齢だけではないとご存じですか?
「網膜剥離になったらどうしたらいい?」
「網膜剥離の前兆はある?」
このような疑問をお持ちの方は、ぜひこの記事を参考にしてください。
網膜剥離とは

網膜剥離とは、カメラに例えるとフィルムにあたる網膜が、なんらかの原因により眼底から剥がれてしまう目の疾患です。
ここでは、正常な網膜の状態から網膜剥離が起こるとどうなるか、網膜剥離の分類などを詳しく解説します。
網膜の構造と機能
網膜は、人の眼球の一番奥にある眼底に位置している、0.1〜0.4mmほどの薄い膜です。
人の目をカメラに例えると、網膜はフィルムの役割を担っているため、網膜に異常が発生すると見え方に影響が出てしまうのです。
光は角膜から入って水晶体や硝子体を通り、網膜で受容されます。
そして、視細胞で光刺激が電気信号に置き換えられて、視神経を伝わり脳で映像として認識される仕組みです。
視細胞が密集した網膜の中央を黄斑と呼び、黄斑の機能が低下すると視力にも影響を及ぼしてしまいます。
網膜剥離の状態とは
網膜は外部からの光を捉えて電気信号に置き換える神経網膜と、それを支える土台の網膜色素上皮層により構成され、神経網膜が網膜色素上皮層から剥がれる状態を、網膜剥離と呼びます。
網膜は多数の組織から構成された膜のような形状で、眼球の奥の壁にぴったり張り付いているのが正常な状態ですが、なんらかの原因により剥がれたり浮いたりすると、網膜剥離を発症します。
網膜色素上皮は神経網膜をつくる視神経や視細胞に栄養や酸素を送る働きがあり、網膜剥離が起こるとこの働きが阻害され、十分な供給がされずに視力や視野に悪影響を及ぼすのです。
網膜剥離の分類
網膜剥離は、発生の過程や要因によって、以下のように分類されます。
- 裂孔原性(れっこうげんせい)網膜剥離
- 非裂孔原性(ひれっこうげんせい)網膜剥離
それぞれ解説します。
裂孔原性網膜剥離
裂孔原性網膜剥離とは、網膜裂孔や網膜円孔から、液化した硝子体がが網膜の下に入り込んで発生する網膜剥離のことです。
孔の大きさにより症状の進行度は異なりますが、発症から時間が経つと範囲が広がり、徐々に網膜が剥がれていきます。
網膜剥離の状態が長く続くと、手術をしても視力の回復が思わしくないケースもあるため、早期発見・早期治療をすることが重要です。
20代と50代の発症率が多いとされていますが、誰にでもなる可能性があるため、後述する原因がある方は注意しましょう。
非裂孔原性網膜剥離
一方、非裂孔原性網膜剥離とは、孔を伴わずに発生する網膜剥離で、滲出(しんしゅつ)性と牽引(けんいん)性があります。
滲出性網膜剥離は、網膜の下にある脈絡膜や一番奥にある網膜色素上皮側から滲出液が出てきてしまい、網膜が浮き上がって起こる網膜剥離です。
滲出液が出てきてしまう要因になるのは、ぶどう膜炎や眼内腫瘍、妊娠高血圧症候群などです。
牽引性網膜剥離は、目の中に発生した増殖組織や新生血管の発生により、網膜が引っ張られることで起こる網膜剥離です。
増殖糖尿病網膜症や網膜静脈閉塞症、未熟児網膜症などが原因となります。
非裂孔原性網膜剥離は、目の疾患だけが原因とは限らないため、原因である疾患の治療が必要です。
放置すると失明の可能性もある
網膜剥離は放置すると、失明の可能性もある病気です。
網膜が剥がれても痛みがないため、初期には自覚しづらく発見が遅れてしまうケースも少なくありません。
前兆に気づかなかったり、気づいても放置していたりして適切な治療を受けていないと、少しずつ網膜剥離が進行します。
網膜剥離の症状が進行して黄斑が剥がれると、急激に視力が低下することがあり、治療をしないまま放置すると失明する場合もあります。
網膜が剥がれた状態が長く続くほど、手術をしても視力が回復しない可能性が高まるため、早期発見と早期治療が重要です。
網膜剥離の原因

網膜剥離は、加齢だけでなくさまざまな原因で起こります。
ここでは、網膜剥離の原因となるものを6つ挙げて、詳しく解説します。
加齢
加齢による原因で起こりやすい網膜剥離には、後部硝子体剥離と呼ばれるものがあります。
目の中は硝子体というゼリー状の液体で満たされていますが、加齢と共に少しずつ液体へと変化していき、容積が減ることで硝子体に空洞ができていきます。
液体化が進むと硝子体と網膜が離れる後部硝子体剥離が起こり、網膜を引っ張ることになり、孔や裂け目が発生する可能性があるのです。
この裂孔から液状になった硝子体が網膜の下へ入り込むと網膜剥離が引き起こされます。
高齢になるほど硝子体の液体化が進むため、網膜剥離が進行する速度も早くなります。
強度近視
強度近視の方は、眼球が変形するため網膜剥離が起こりやすいリスクがあります。
近視が強くなるほど眼球の奥行きが長くなり、網膜が薄く引き伸ばされているケースが多いです。
薄くなった網膜は裂けたり、孔ができやすかったりして、裂孔原性網膜剥離を発症する可能性が高まります。
どこまでの近視が網膜剥離になりやすいかは明確ではありませんが、強度近視とされる-6.0D以上の方は、定期的に眼科検診を受けて眼底の状態をチェックするとよいでしょう。
外傷
目への外傷によって、網膜剥離を発症するケースがあります。
強い衝撃を受けて眼球が変形したり、硝子体が揺さぶられたりすると、網膜を引っ張ってしまい裂孔が生じる可能性が高まります。
身体がぶつかるスポーツや、交通事故などで網膜剥離になる方も少なくありません。
外側の傷が残らなくても網膜が剥がれていることもあるため、目に衝撃を受けたときは眼科で眼底検査を受けましょう。
他の疾患によるもの
非裂孔原性網膜剥離は、目の疾患や他の疾患などによって発症する可能性があります。
- ぶどう膜炎
- 眼内腫瘍
- 中心性漿液性脈絡網膜症
- 網膜血管腫
- 妊娠高血圧症候群
- 増殖糖尿病網膜症
- 網膜静脈閉塞症
- 未熟児網膜症 など
上記のような疾患が原因になり網膜剥離が引き起こされた場合、原因疾患の治療が必要です。
そのため、網膜剥離の手術をすれば治るとは言い切れず、治療は多岐に渡ります。
眼科検診と同時に、原因疾患の治療も相談しながら進めてください。
アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎が直接の原因というわけではありませんが、目の周りにかゆみがあり強くこすった場合に網膜剥離が起こる可能性があります。
かゆみによって何度もまぶたをこすったり、叩いたりすると、外傷と同じように眼球が変形して網膜が剥がれてしまうケースがあるのです。
アトピー性皮膚炎の症状が目の周辺に強く出ている方は、なるべく目を触らないように注意して、アトピー性皮膚炎の治療も行いましょう。
ストレス
ストレスが原因で起こる中心性漿液性脈絡網膜症(ちゅうしんせいしょうえきせいみゃくらくもうまくしょう)は、網膜剥離につながるリスクがあります。
30〜50代の男性に多い疾患で、片目にだけ起こることが多いです。
視力低下や視野のゆがみ、中心部が見えにくくなるなどの症状があります。
ストレスにより過剰なアドレナリンが分泌され、血液成分の滲出が起こり、その成分が黄斑の下に溜まるのが原因と考えられています。
なお、ストレス軽減とともに自然治癒する方もいますが、再発や長期化するケースも少なくありません。
すぐに失明するわけではありませんが、仕事をするうえで支障が出る可能性があるため、早めに眼科を受診して治療をしましょう。
網膜剥離の前兆や症状

網膜剥離が起こると、視界に違和感があったり、視力の低下などの自覚症状が出てきたりします。
早期発見が重要な網膜剥離は、兆候を見逃さないように、どのような見え方になるのかを知っておくのが大切です。
ここでは、網膜剥離の前兆や症状について詳しく解説します。
飛蚊症
飛蚊症(ひぶんしょう)とは、目の前に虫やごみなどが飛んでいるように見える症状です。
明るい場所や太陽の光がある場所で感じやすく、浮遊物が移動しているように見える感覚の方も多いでしょう。
網膜が剥がれたことで硝子体が混濁して、影として網膜に写り込んで起こります。
加齢による硝子体の液体化でも起こる症状ですが、網膜剥離につながる可能性があるため、注意が必要です。
一時的なものではなく、長時間続く、繰り返す、増えるなどがある場合は、眼科を受診しましょう。
光視症
光視症とは、視界に一瞬から数秒稲妻のような光が走ったり、チカチカと点滅しているように感じる症状のことです。
硝子体が網膜を引っ張る刺激を、光と感知してしまうために起こります。
暗い場所で視線を動かしたときに感じやすく、光がないのに光ったと感じたら、光視症の可能性があります。
視野欠損
網膜剥離の症状が進むと、視野の一部が欠けて見える視野欠損の症状が出てきます。
一部分だけがカーテンをかぶせたように、暗くて見えづらくなるのが特徴です。
網膜裂孔の位置や大きさで、範囲や進行度は異なります。
視力低下
網膜剥離で視力の低下を自覚する頃には、黄斑部まで剥離が進んでいる可能性があります。
メガネをかけても改善しないほどの視力低下がある場合は、すぐに眼科を受診してください。
黄斑が剥がれてしまうと急激に視力が下がり、様子を見る間もなく失明してしまうこともあります。
また、治療後の視力がどの程度回復するかも黄斑の状態に左右されるため、視力低下に気づいた時点で検査を受けることが重要です。
網膜剥離の治療法

網膜剥離の治療法は、大きく分けてレーザー治療と手術です。
発見時の網膜の状態や症状により、どのような方法で治療するかが異なります。
レーザー治療
早期発見の場合、レーザーによる網膜光凝固術が可能なこともあります。
レーザーを眼球に照射して、裂孔や円孔を熱で固めて塞ぐ治療です。
ただし、症状が比較的軽度なケースでは可能ですが、状態によっては手術の方が適している場合もあります。
手術
網膜剥離の手術には、硝子体手術があります。
硝子体手術は、裂孔が大きい、硝子体出血がある、増殖膜を合併しているなどの場合に行います。
眼球に小さな穴を3つほど開けて、網膜と硝子体の癒着を切除したり、網膜を元の位置に戻したりする手術です。
硝子体の代わりに医療用ガスを充填するため、網膜の状態により、網膜が固定されるまでうつ伏せ体勢が必要な場合があります。
まとめ
網膜剥離は加齢によるものだけでなく、強度近視や外傷、他の疾患、ストレスなど、さまざまな原因で発症する可能性がある病気です。
網膜が剥がれても痛みがないため、見え方の変化を前兆として知っておき、見逃さないようにするのが重要です。
網膜剥離は放置していると失明に至る恐れがあります。
しかし、早期発見と早期治療により、視力を取り戻せる可能性があるため、飛蚊症や光視症など、見え方が普段と違うと感じたらすぐに眼科を受診しましょう。
深作眼科は眼科専門病院として、硝子体手術をはじめ多数の眼科手術を行っております。
網膜全体を見ることが可能な広角観察システム「BIOM」を導入し、重症例の硝子体手術に活用しています。
網膜の状態の診断や、網膜剥離の手術をご希望の方は、深作眼科へご相談ください。