網膜剥離の手術後は何日で見えるようになる?合併症のリスクも解説
2025年11月5日

「手術したら何日で見えるようになるの?」
「合併症のリスクはある?」
網膜剥離になったら、視力がどうなるのか心配になる方は少なくありません。
網膜剥離の手術は、剥離を進行させない処置をして、視力を失わないように予防するために行われます。
この記事では、手術後の見え方や手術内容、合併症の可能性について詳しく解説します。
網膜剥離の手術に対する不安や疑問を解消するために、ぜひ参考にしてください。
網膜剥離の手術後、何日で見えるようになる?

網膜剥離の手術をした後、視力がどれくらいで回復するのか、見えるようになるのかは多くの方が気になるポイントです。
治療をすることで網膜剥離の進行を防ぎ、失明のリスクを軽減できます。
ここでは、網膜剥離の手術後の見え方や、視力の回復までの期間について詳しく解説します。
数日はぼやけた見え方になる
網膜剥離の手術をして数日は、視界がぼやけたように見える方もいます。
これは、硝子体の代わりに空気や特殊な眼内ガス、シリコンオイルを注入した場合によくある症状です。
ガスなどを注入すると、もやがかかったような見え方になります。
空気や眼内ガスは時間経過で自然に吸収されますが、これらが半分以下になるまでの約1週間は、視界がぼやけた状態が続く可能性が高いです。
空気や眼内ガスが完全に抜けるまでは、2週間以上かかり、シリコンオイルは手術で抜く必要があります。
また、見え方には個人差があるため、これらの症状を感じない方もいれば、1週間以上続く方もいます。
眼内の安定までは1~3ヶ月
網膜剥離の手術後に眼内が安定するまでは、約1〜3ヶ月かかります。
手術時の年齢や術前の網膜剥離の状態がどの程度だったのかなど、さまざまな要因により安定や視力回復までの期間は異なります。
高齢の場合は安定まで時間がかかることもあり、個人差が大きいところです。
眼内の状態が安定するまでの期間は、目を動かすのは問題ありませんが、酷使するような行動はなるべく控えてください。
仕事への復帰は、事務職や座り仕事の方は手術後約1ヶ月後から、運転業務や肉体労働がある方は手術後約2ヶ月後からが目安です。
ただし、回復には個人差があるため、医師の診断により仕事復帰への許可が得られてからにしてください。
視力の回復は術後半年~1年かかることもある
網膜剥離の手術後は視力が徐々に回復しますが、約半年~1年かかる方もいます。
視力回復までの期間は人それぞれ異なり、どの程度の視力が戻るかも個人差があります。
期間が変わる要因は、網膜の孔や裂け目の大きさ、黄斑部の状態、剥離してからの期間などです。
硝子体出血があった場合は、視力回復までの期間が長くなるかもしれません。
また、黄斑部剥離があると、網膜剥離の手術をしても元の視力が戻らず、視界の歪みや見え方の違和感が残る可能性があります。
このため、網膜剥離が黄斑部まで進行する前に早期発見し、早期治療を開始するのが重要です。
網膜剥離の治療方法

網膜剥離の治療方法は、症状の進行度により異なります。
発見が早く治療が早いほど、視力への影響が少なく、治療効果が期待できます。
ここでは、網膜剥離の主な治療方法を挙げていますが、症状により異なるため、どのような治療を行うかは医師とよく相談してください。
網膜裂孔の場合はレーザー治療
網膜剥離の初期に発見できて、網膜裂孔のみで剥離が進んでいない場合、レーザー治療の光凝固術が適用されることが多いです。
網膜剥離への進行を止める目的の治療として行われ、外来にて短時間で処置できます。
眼球へレーザーを照射して、孔や裂け目の周囲を熱で固めて、症状の進行を抑える治療です。
ただし、網膜裂孔のみでも大きさや深さにより、手術の方が適していると診断される場合もあります。
硝子体手術
硝子体手術は、眼球の内側から治療を行う手術です。
網膜裂孔が大きい・深い、硝子体出血がある場合にも、硝子体手術が適応です。
眼球に3つほどの穴を開け、網膜裂孔から網膜下に流れ込んだ水分や硝子体を取り除き、裂孔の周囲をレーザーで凝固して進行を予防します。
網膜の再剥離を防ぐために、眼内に空気やガス、オイルを注入します。
また、網膜剥離は白内障と併発することもあり、白内障の手術が網膜剥離を防ぐことにつながるため、症状によっては同時手術を行う可能性もあります。
網膜剥離の手術後に起こり得る合併症

網膜剥離の手術後、成功してもまれに合併症が起こることがあります。
確率は低いとはいえ、手術である以上リスクを伴うため、合併症の可能性も知っておきましょう。
ここで紹介したもの以外にも、手術後に目に違和感があるときは、すぐに眼科医に相談してください。
網膜再剥離
網膜剥離の手術後に網膜が再び剥がれてくることを、網膜再剥離と呼びます。
不完全な手術や網膜裂孔の見落とし、新たに発生した裂孔などが原因と考えられています。
手術の失敗というわけではなくても、一定確率で起こり得る現象です。
網膜と脈絡膜の接着が弱いと、手術後数日~数週間で再び網膜が剥がれてきます。
この場合は、硝子体手術をもう一度行う必要があります。
増殖性硝子体網膜症
網膜剥離の手術後に再剥離が起こったときや、眼内の炎症が強い、網膜剥離の放置期間が長いなどの場合、増殖性硝子体網膜症が起こる可能性があります。
網膜に新生組織ができることにより、出血したり、網膜を引っ張ったりして、網膜に悪影響を与えます。
増殖性硝子体網膜症は進行が早いため、発見次第治療が必要です。
また、増殖性硝子体網膜症は難治性のため、手術を繰り返す方や、視力の回復が難しいケースも少なくありません。
駆逐性出血
駆逐性出血とは、手術中や手術の直後に目の中から突然出血が起こることです。
極端な高血圧や緊張、目に力が入ったなどが原因で起こる症状で、対処が遅れると失明につながる可能性が高まります。
早期に出血を止める治療を行えば、再手術が可能です。
手術中の血圧上昇も原因のひとつのため、血圧コントロールをする場合もあります。
眼内炎
網膜剥離の手術の傷口から細菌や真菌、ウイルスなどが侵入して感染症を引き起こすと、眼内炎が発症するリスクがあります。
眼内炎は重篤な視力障害の原因になり、放置すると短期間で失明に至るケースもあるため注意が必要です。
手術後に急激な視力低下や充血、激しい眼痛、目の周りの腫れなどの症状を感じた場合は、すぐに眼科を受診して治療を受けてください。
早期治療をして、抗生物質の投与や手術などで炎症と細菌の繁殖を抑える処置をすれば、視力を残せる可能性が高まります。
網膜剥離の手術後・よくある質問

網膜剥離の手術後について、よくある質問をまとめました。
気になっていることや、不安に思っていることを解消して、手術に臨むための参考にしてください。
術後の安静期間はどれくらい?
網膜剥離の手術後は、日帰り・入院に関わらず、医師の指示に従い2週間は安静期間をとりましょう。
安静期間は目を休め、再剥離を防ぐためにも大切な期間です。
うつ伏せ姿勢の制限がある場合は、決められた期間はトイレや食事、点眼以外の時間はうつ伏せ姿勢の維持を守りましょう。
回復の度合いや眼内の状態により異なるため、医師の指示を守って、少しずつ日常生活に戻ってください。
また、毎日の点眼薬が処方されるため、忘れないように注意しましょう。
テレビやスマホは見れる?
網膜剥離の手術後、2週間ほどは目が疲れる行為は避けましょう。
安静期間は暇なため、テレビやスマホを見てしまいがちですが、画面を見続けるのは目に負担がかかります。
目の刺激にならないように、なるべく目を使う行為を避けなければなりません。
また、眼球内にガスの注入があった場合は、視界がぼやける期間が約1週間続きます。
その間は特に、周囲が見えないからと目をこらしたり、無意識に力が入ったりしないように注意して、目を休めてください。
過ごし方は?うつ伏せで過ごすって本当?
網膜剥離の手術後は1週間うつ伏せが続く、と聞いたことがあるかもしれませんが、必要かどうかは手術方法やクリニックによって異なります。
うつ伏せが必要なのは、眼内に空気やガス、オイルなどを注入して網膜を復位させる(元の位置に戻す)ためです。
半日~数日の場合や、長くて2週間ほど続ける場合もあり、網膜復位のために必要な期間です。
うつ伏せが長く続くのはストレスを感じる方もいるかもしれませんが、医師の指示を守って過ごしましょう。
特に硝子体手術を行う方は、安静期間の過ごし方に不便を感じないように、事前に準備をしておきましょう。
手術後の視力はどれくらい回復する?
手術後に視力がどれくらい回復するかは、黄斑部が剥離していたかいないか、剥離してからの期間などにより異なります。
黄斑剥離があったり、網膜剥離してからの期間が長かったりすると、元の視力を取り戻すのが難しいケースが多いです。
黄斑は視細胞が集まっている部位で、視力に大きな影響を及ぼします。
網膜剥離により黄斑部が剥離すると、手術により網膜が元に戻ったとしても、視力が回復せずに見え方の違和感が残ることもあります。
一方、黄斑部まで剥離が進行していなかった場合は、手術後は視力や見え方は網膜剥離の前の状態に戻る可能性が高いです。
このため、視力の維持のためにも、網膜剥離は早期発見・早期治療が重要となります。
日常生活や仕事復帰は?
網膜剥離の手術後は、安静期間を経て少しずつ日常生活や仕事復帰をしていきましょう。
術後1か月は目の周辺はもちろん、顔に触れないように注意して、洗顔やメイクは控えてください。
洗顔はせず、清浄綿で目の周り以外を拭く程度に留めます。
2週間目からは、入浴や洗顔も可能ですが、目を強くこする、押さえないように注意して過ごしてください。
目に負担がかからない家事は、2週間~1ヶ月頃から普段のように行えます。
事務や動きの少ない仕事は1ヶ月後頃から、運転や重労働の仕事は2ヶ月後頃から復帰が可能ですが、術後の通院で医師の許可を得てからにしましょう。
また、手術後1ヶ月は、激しい運動や目を酷使する行為は避けるように心がけてください。
視力が戻っていない状態のため、車の運転は避けた方がいいでしょう。
運転が可能と医師の許可を得るまでは、バスや電車、タクシーを利用したり、家族や知人に送迎を頼んだりしてください。
飛行機に乗ってはいけない?
手術で空気やガスを注入した場合は、ガスが吸収されるまでは飛行機への搭乗は控えてください。
飛行機と同様に、登山や標高が高いところは、気圧の変化により眼内のガスが膨張して眼圧が上昇してしまう危険があります。
空気ならば1~2週間ほど、ガスは1~2ヶ月ほどは、気圧差が大きい場所に行ったり、飛行機に乗ったりするのはリスクがあるため避けましょう。
まとめ
網膜剥離の手術後は、数日はぼやけて見えることがあり、少しずつ戻っていきます。
見え方や視力の戻りには個人差があり、数日~1週間以上かかる方もいて、はっきり何日とは言い切れません。
網膜剥離の進行具合や裂孔の状態、どれくらいの期間が経っているか、手術の方法などによっても異なります。
長期間放置していて、網膜剥離が黄斑部まで進行していた場合は、視力を取り戻すのが難しかったり、失明のリスクがあったりします。
しかし、早期発見して早期治療開始をすれば、ほとんどの場合視力の回復が可能です。
見え方に違和感がある、視力が急に落ちたなどの症状がある方は、すぐに眼科で検査を受けましょう。
深作眼科は、横浜と六本木で豊富な手術実績をもつ眼科専門病院です。
網膜硝子体関連手術は多くの手術例があり、重症の患者様や緊急手術にも対応しております。
難しい症例の網膜剥離にお悩みの方は、ぜひ深作眼科へご相談ください。