緑内障の症状とは?段階別の見え方の変化や種類を詳しく解説
2025年11月6日

緑内障になったらどのような症状が現れるのか、ご存じですか?
失明するのではと不安になるかもしれませんが、視力を失うと決まっているわけではありません。
緑内障の初期症状を見逃さないように検査をして、適切な治療を受ければ緑内障の進行を抑えて視力を保てる可能性は高まります。
この記事では、緑内障の段階別の見え方や、検査方法、治療などについて詳しく解説します。
緑内障の症状や検査内容を知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
緑内障とは?

緑内障とは、眼圧上昇や他のなんらかの理由により、視神経が障害されて視野の欠けや視力低下などが起こる目の疾患です。
通常100万本以上が束になった視神経がダメージを受けることにより、徐々に機能を失い、担っていた部分が見えなくなります。
40代以降に発症率が上がり、適切な治療を行わず放置すると失明してしまう恐れもあります。
2019年度の調査により、日本の視覚障害の原因疾患第1位は緑内障であることがわかり、2015年と比較すると20%以上も増加していました。(参照:岡山大学)
緑内障は初期症状がわかりづらいこともあり、気づかないうちに少しずつ進行していくのも特徴のひとつです。
緑内障の症状

緑内障の症状は、始めのうちは自覚症状がないことも多く、見え方や視力に違和感が出る頃にはかなり進行してしまっている可能性があります。
自覚症状を感じる前に発見するためにも、定期的な眼科検診が欠かせません。
ここでは、緑内障になるとどのような症状が起こるのかについて解説します。
緑内障の主な症状
緑内障は、主に以下のような症状が現れます。
- 視野が欠ける
- 視野が狭くなる
- 視力が低下する
- 視界がかすむ
このような症状は、緑内障の代表的なものです。
視野が欠ける(視野欠損)症状は、視野の一部が暗くもやがかかったように見えにくくなり、目頭側や上下などの端から徐々に範囲が広がっていき、視野が狭くなります(視野狭窄)。
それに伴い視力低下や視界がかすむなどの症状も現れ、年月をかけてゆっくり進行していきます。
急性緑内障発作
緑内障は症状の進行が緩やかですが、例外が急性緑内障発作です。
- 激しい目の痛み
- 充血
- 目のかすみ
- 嘔吐
- 吐き気を伴う頭痛 など
これらは、急激に眼圧が上がったことにより緑内障を発症したときに起こり、緊急で眼圧を下げる処置が必要な危険な状態です。
急性緑内障発作は、放置すると一晩~数日で失明に至るケースもあるため、このような症状が現れたときは、すぐに眼科を受診してください。
激しい目の痛みを伴うのが特徴なため、緑内障を見逃さないためにも、目の症状について医師に詳しく伝えましょう。
段階別の見え方・症状の進み方

緑内障の症状は初期・中期・後期で見え方が異なります。
ここでは、それぞれの段階別に見え方や症状の進み方について詳しく解説します。
初期
緑内障の初期は、自覚がないことがほとんどです。
見え方はあまり変わらず、しかし目には異常が起こり始めている状態なため、検査を受けると緑内障と診断されます。
初期は視野の欠けが小さな黒い点に見えることもありますが、眼科で検査をしなければ、気づくのは難しいでしょう。
気づきにくい理由は、通常両目でものを見ているため、例え片目の一部分の視野が欠けていても、見えている方の目で補っているからです。
中期
緑内障の中期になると、症状が徐々に進んでいきます。
視野欠損や視野のかすみは少しずつ増えているはずですが、中期でも自覚症状がない方も少なくありません。
左右の目が補い合って気づかないことが多いですが、片目ずつ見てみると明らかに見えていない箇所がわかるのが中期頃です。
後期
後期になると多くの方には自覚症状があり、自覚する頃には緑内障の症状はかなり進んでいます。
両目で見ていても視野欠損の影響で見える範囲が狭くなったり、視力が低下してぼやけて見えていたりしますが、この段階で初めて眼科を受診するケースも多いです。
1度見えなくなった視野は、元に戻すことはできません。
緑内障の治療は、現在見えている範囲や視力を保って、これ以上進行させない目的で行われます。
治療に積極的でなく途中でやめてしまったり、目の異常に気付いていても受診しないで放置したりすると、緑内障はどんどん進行して、やがて失明に至る可能性もあります。
緑内障の種類

緑内障は、原因が不明の原発緑内障と、原因がわかっている続発緑内障、先天性の目の異常による小児緑内障などの種類があります。
特に、閉塞隅角緑内障は、他の疾患の服薬に制限があるため、自分の緑内障がどの種類なのかをきちんと把握しておきましょう。
原発開放隅角緑内障
原発開放隅角緑内障は、目を満たす水分(房水)の排出をする隅角が閉じてはいないが、その先が詰まることにより、眼圧が上がり視神経が障害されていきます。
房水が循環することで眼球のハリや球形を保ち、眼圧を一定に調節する機能があるため、循環が滞ると眼圧が上昇してしまうのです。
隅角が詰まる以外の眼圧上昇の要因もあると考えられますが、その原因ははっきりとはわかりません。
症状の進行は遅く、数年〜数十年かけて徐々に視野が欠けていきます。
正常眼圧緑内障
正常眼圧緑内障とは、眼圧が正常範囲内(10~20mmHg)にもかかわらず発症し、原発開放隅角緑内障に分類されます。
どれほどの眼圧に耐えられるかは個人差が大きく、眼圧が正常でも視神経が障害されていれば緑内障と診断されます。
日本の緑内障の過半数は正常眼圧緑内障とされていて、若年層の方も多い傾向ですが、原因は不明です。
症状や進行のしかたは、原発開放隅角緑内障と同様にゆっくりと進みます。
原発閉塞隅角緑内障
原発閉塞隅角緑内障は、隅角が狭まったり閉じたりして、房水の流れが止まってしまうことにより眼圧が上昇し、緑内障を発症する種類です。
原発閉塞隅角緑内障には禁忌薬があるため、診断を受けたら他の疾患で処方される薬にも注意が必要です。
抗コリン薬が禁忌とされていて、鎮痛剤や睡眠薬、抗ヒスタミン薬も該当薬剤があります。
瞳孔を広げる作用(散瞳)がある抗コリン薬は、原発閉塞隅角緑内障の方が服用すると、隅角の閉塞を引き起こし急性緑内障発作につながる可能性が高まります。
他の疾患でこれらの薬が処方される場合、緑内障がないかを聞かれることがありますが、必ず医師に申告してください。
なお、慢性の場合は原発開放隅角緑内障と症状や進行は変わりませんが、急性の場合は緊急性の高い危険な状態になるため、注意しましょう。
急性緑内障
突然隅角が閉じて急激に眼圧が上がり緑内障を発症すると、急性緑内障発作が起こります。
原発閉塞隅角緑内障に含まれる種類ですが、緊急性が高く、すぐに処置をしないと数日で失明してしまう恐れがあります。
続発緑内障
原因がわからず眼圧が上がる原発緑内障とは異なり、眼圧上昇の原因がわかっている緑内障を、続発緑内障と呼びます。
原因になるのは、以下のようなものです。
- 他の目の疾患(網膜剥離、ぶどう膜炎、眼内腫瘍など)
- 全身疾患(糖尿病、脳疾患、ステロイド点眼薬など)
- 外傷
これらの原因により眼圧が上がったり、視神経へのダメージを受けたりした場合に、続発緑内障を発症する可能性があります。
原因となる病気と緑内障の治療を、並行して行うことになります。
ただし、目に外傷を受けたことによる緑内障は、直後~数年後と幅広く発症するリスクがあるため、年単位での経過観察が必要です。
小児緑内障
小児緑内障は、先天緑内障や発達緑内障と呼ばれていた病気で、先天的な隅角の異常があることにより発症する傾向があります。
年齢に関係なく症状が現れるため、若年の方でも緑内障になる可能性があります。
緑内障診断のための検査

緑内障を早期発見するために、眼科検診で詳しい検査を行います。
通常の健康診断に含まれていない検査もあり、緑内障の診断には欠かせない検査です。
検査費用と時間
緑内障診断のための検査にはさまざまな種類がありますが、クリニックによりどの検査が行われるかは異なります。
検査は保険適用となり、検査費用のみだと自己負担3割の方で2,000~4,000円ほどと考えておきましょう。
なお、初診料や他の目の疾患についての検査にかかる費用は含んでいません。
以下で紹介する検査が全て含まれているとは限らず、医師の方針により検査内容は変わります。
かかる時間の目安は約30分~1時間ですが、眼底検査で瞳孔を開く必要がある場合、30分以上の待機時間があります。
検査項目が多ければ1時間以上かかることもあるため、時間の余裕をもっておきましょう。
眼圧検査
眼圧検査は、緑内障の診断において重要な検査です。
計測方法は、目に直接測定器具を当てる方法と、目に空気を当てる方法、小さなチップを目に当てる方法があります。
ただし、測定する時間帯やそのときの血圧、季節などのさまざまな要素で変動するため、眼圧だけで診断するわけではありません。
眼底検査
眼底検査では、視神経や網膜の状態を見て、緑内障を発症しているか確認します。
緑内障を発症していると、視神経乳頭(視神経線維が束になっている部分)が圧迫されているため、異常がないかを調べるのが眼底検査です。
瞳孔を開く(散瞳)点眼をする場合は、検査前に30分ほどの時間待機してから検査します。
検査後に瞳孔が元に戻るまで数時間かかるため、車の運転は控えましょう。
隅角検査
隅角検査は、検査用のコンタクトレンズを装着して、隅角の状態を確認します。
房水の循環や量のバランスを保つには、隅角が正常に機能している必要があります。
隅角の異常があると、眼圧に影響するため、緑内障の診断に重要な検査です。
視野検査
視野欠損の有無がないか、どの程度の範囲が見えているかを調べるのが視野検査です。
緑内障になると、視線を動かさずに見える範囲が狭まったり、見えない部分が出てきます。
片目ずつ調べるため、左右のどちらに視野欠損があるかを診断できます。
OCT検査
OCT(光干渉断層計)を使用した検査では、眼底の3D画像診断が行えます。
網膜や視神経乳頭の断層を詳細に確認できるため、わずかな視神経乳頭の異常を発見できる検査です。
OCT検査をすることにより、初期の緑内障を診断できます。
緑内障の治療

緑内障の治療は、基本的に眼圧を下げてコントロールして、進行を抑えるのが目的です。
障害された視神経は、元通りに回復することはなく、欠けた視野は戻りません。
早期発見・早期治療をして、現在の視力の維持と、QOLを保ちましょう。
点眼薬
点眼薬による薬物療法は、眼圧を下げるために使用します。
緑内障で処方される点眼薬は数種類あり、眼圧を下げるものや房水に作用するもの、視神経への血流をうながすものなど、効果はさまざまです。
症状により点眼薬を使い分けたり、複数を組み合わせたりして、緑内障の進行を抑えます。
点眼薬は毎日自分で使用するため、使用方法を守り継続するのが重要です。
レーザー治療
点眼薬治療で眼圧を下げるだけでは不十分だった場合、レーザー治療を行うケースもあります。
レーザー治療にもさまざまな種類があり、クリニックにより行っている方法は異なります。
例えば、選択的レーザー繊維柱帯形成術(SLT)は、繊維柱帯(房水の排水路)の流れを改善するレーザーで、痛みが少なく、治療時間が2、3分と短いため、負担が軽減される方法です。
他にも多くの種類があるため、緑内障の種類に適したレーザー治療を眼科医と相談して決めましょう。
手術
点眼治療、レーザー治療をしても、眼圧を下げる効果が思うように出ない場合、手術を行うこともあります。
手術方法は以下のようなものがあります。
- 線維柱帯切除術(トラベクレクトミー)
- 線維柱帯切開術(トラベクロトミー)
- 緑内障インプラント手術 など
また、緑内障と白内障の同時手術も行える場合もあるため、眼科で相談してみましょう。
まとめ
緑内障は、視野欠損の症状が徐々に進むのが特徴です。
年単位の長期間をかけて進行する場合と、急性緑内障発作による急激な症状悪化の場合があります。
初期には自覚症状がないことから、中期・後期になって気づいたときにはかなり進行してしまっていた方も少なくありません。
緑内障の治療は、視力の回復はできず、今見えている範囲を維持するのが目的です。
視力を守ることは、QOLを保つことにもつながるため、緑内障の早期発見を目指して、定期的な眼科検診を受けましょう。
深作眼科は、横浜と六本木の2院をもち、緊急手術にも対応している眼科専門病院です。
OCT検査を使用した早期発見や、多くの種類の手術経験を元に、適した治療方法をご提案いたします。
視野に違和感がある方、緑内障の治療について知りたい方は、深作眼科へご相談ください。